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小説、映画、音楽の感想など

本 「言語起原論の系譜」互盛央, 2014

言語起源論の系譜

言語起源論の系譜

古代エジプトの王の実験から現代の統計処理による最初の言語の推定まで多くのエピソードや研究者が出てくる。

最初の言語は何か、という問題が、隣国との関係で不安定な国の正当性確保のために持ち出されるのは、なるほどと思った。

旧約聖書を記述しているために特権的だったヘブライ語が、ダンテや宗教改革を経て複数の言語のうちの1つという位置づけになり、19世紀には生物学の進化論を背景にセム語は劣った言語のように言われるなど、反転する様がスリリングだった。

言語は自然に生まれたのか、それとも人工的に作られたのか、という対立を軸に描いているんだろうな、とは思う。最後ソシュール止揚されたような形か。

情報量が多く、整理がやや抽象的だったので難しかった。フランス現代思想が基盤になっているんだろうか。歴史の説明として「フーコーはこう言っている」というのはどこまで意味があるんだろう?

多くの時代、多くの人物がつながっていくのはおもしろかった。

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映画『沈黙』

思ったよりも淡々としていた。

 

イッセー尾形が好演。

頭が良さそう。

壮絶な拷問シーンというより、精神的に追い詰めて棄教させるのがうまい。

あと、その後も何度も証書を書かせるのが嫌らしい。

 

「日本は沼なのだ」という命題は、芥川龍之介の小説『神神の微笑』に出てくる「造り変える力」の変奏だと私は思う。

 

浅野忠信の「これは形式なんだ」としつこく言うのがなんとなく説得力あった。

 

映画の中で、奇跡が起こる、或いは主人公の幻想なのかもしれない。

その後の含みが本作品の最大のテーマになると思うのだが、やや淡々とし過ぎている様に感じた。だからこそラストシーンが光るのだが。

ただ、もう幾つかエピソードが有っても良かったと思う。

 

 

 

 

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映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』

チェリストヨーヨー・マ率いるシルクロード・アンサンブルのメンバーの来歴と直面している各出身地の問題を追ったドキュメンタリー。

 

ヨーヨー・マは7歳のときにレナード・バーンスタインと共演するという神童だったが、それが今でも世界の第一線で、かつ新しいことにチャレンジしていることは素直にすごい。

 

また、演奏シーンでの、ヨーヨー・マの感情移入っぷり、全身で音楽を表現する人の、大袈裟ではあるけれども無駄が無い姿に驚いた。

 

冒頭の、90枚というこれまで出したアルバムの数なんかどうでもいい、という苛立ち。また、「自分の声が無い」という指摘への悩み。

 

エキゾチックなもの、何かこれまでと違うクリエイティブなもの、それを探求する時のヨーヨー・マの「これはどう弾いているんだ?」と取り憑かれたように楽器をいじるところが、彼の本質的なところなんだろうと思った。

 

この映画では、ヨーヨー・マ以外のメンバー達は革新的な面を持ち若い頃苦労しつつ、今では出身地の伝統を守ろうとする方向に向かっているという描かれ方をしている。

 

そこに違和感も持った。ヨーヨー・マの天才過ぎてコアを持たない空虚さ、各地のミュージシャンがコラボする一瞬だけに自分の存在を見つけようとする賭けと、「伝統が大切」という映画が無理やり良い話の感じで結論をつけてまとめようとする脚色に齟齬があるように思う。政治的には正しいのかもしれないが。

 

メンバーによる晩飯のシーンで、シャンパングラスで演奏するシーンなど、世界の一流ミュージシャンの集まりという感じでとても優雅だった。映画全体的には悲劇や苦労という側面ばかりが強調されていたが、そういう選ばれた芸術家のスノッブな楽しみという側面ももっと観たかった。

 

 

 

 

 

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映画『We are X』

一回観たらまた観たくなって2回目を観た。

なぜか何度か観たくなる。X JAPANのドキュメンタリー。

 

何か感情移入させる所がある。

ナルシスティックなところを感じないではないが、体を限界まで酷使しているところがそれを担保している。

 

英語で、アメリカで活動する事が、幅や可能性を広げているんだなと思った。

 

私は X の昔の歌しか知らなかったが、最近の曲はよりエモーショナルになって厚みを増していると感じた。以前は激情に任せた短めの旋律という印象だったが、再結成後の歌はより複雑な感情を救い上げようとしていて、一息の旋律も長くなっていると感じた。YOSHIKIという人の、ミュージシャンとしてのパワーアップだろうか。

 

自分にも何かできそうな、挑戦したくなる映画だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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映画 『ザ・コンサルタント』

※ ネタバレあり。

◾︎良かった所:

  • 最初の方の会計の相談に乗るシーン。人情味があるんだな、というのがわかって良い。でもその後の自閉症で人とうまく交流出来ないというのと矛盾もするような。
  • 全体的に雰囲気がシリアスで悲しみに覆われていてでい。
  • ヒロインが地味だけどかわいい。勝負ドレスが落ち着いた緑なのも地味で良い。美術好きという所も好感。
  • 銃撃戦がとても迫力ある。重火器を使っているのか、射撃音がすごく音が大きくてビビる。しかもガガガガガと連射するので怖い。
  • キャスティングが良い感じ。ベン・アフレックの哀しそうで不器用な表情が良い。子供の頃のエピソードや、精神状態を落ち着けるための独特な療法は、なんだか凄みがあって良かった。もうちょっと何でそうしてるのか説明が欲しかったけど。強い光や音は苦手なんじゃなかったのか?


◾︎気になった所

  • 自閉症(映画の中の診断書ではアスペルガー症候群のようだが)、兄弟の関係、老捜査官の最後の仕事、不正会計、ブラックマネーなど、いろいろ盛り込みすぎた感じ。

そして、クライマックスに近づくにつれて、それぞれの背景を深堀するために説明するシーンが入るので、クールダウンしてしまう。

兄弟愛のラインは思い切って消去するべきだったのでは。しかし恋愛の方を主軸にするなら、『レオン』みたいにヒロインをもっとキャラ立ちさせて主人公と対にする必要があるだろう。追いかける側の若い女性捜査官が暗い過去があって良い感じだったので、変えるならこちらをヒロインにするなら行けたかもしれない。

  • 主人公が会計士としてすごい能力を発揮するシーンが少ない。もう少し会計士として活躍する場面があっても良いのでは。
  • 親が軍人の偉い人という事で情報操作できてしまうのは、ちょっと都合良いのでは。
  • 主人公が、最初から最後まで余り変わらなかった気がする。ヒロインと会って、他人との関わり方が変わった様だが、弱さを克服した感じはしない。自閉症という設定なので、急に癖を克服できるというのも難しいし良くないが。
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恋ダンス

手をバタバタさせているだけで、ダンスという感じがしない。

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正しさを裏切る現実

東洋経済 2017/1/7 新春特大合併号の、社会学苅谷剛彦氏の巻頭文にある言葉が印象に残った。

昨年のアメリカの大統領選挙でトランプ氏が勝利したことについて。

人々がトランプを支持したのは、正しい教育を受けていないからではなく、むしろ正しさを教育で学んだのに、現実に裏切られたり、あるいは正しさによって庇護される人々にくらべて自分たちは利益を失っていると感じている人が増えているのでは、という説。

正しさを裏切る現実、という言葉は重くずっしりと響いた。

思うに、確率に対する認識が試されているのではないかという気がする。

私は他の人でもあり得たかもしれない、という可能性。

民族や国家はそれらを確率の上で縮減しようとするのではないか?

お前はこの地にこの血を受けて存在させられたのであって、この民族、この国家は必然なのだ、と。

国の提供するサービスや、移住や市民権取得という機能とは別に。

うまく言えないけど。

他でもあり得たかもしれない、という想像力を封じる力。

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