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『母と娘はなぜこじれるのか』 (斎藤環、2014)

精神科医の斎藤環氏と5人の女性との対談集。

特に、漫画家の田房永子さんと萩尾望都さんの母親が強烈なキャラクターで驚きました。

斎藤氏の説は、母-娘関係は母-息子関係よりも深く、距離を取りづらい、その理由は女性の身体を持つという点で共通しているから、というもの。他に、「生き直し」(自分の人生を望むように生きられなかった母親が、娘に自分の夢を実現させようとする事)や、「マゾヒスティック・コントロール」(進んで相手のために苦しい思いをして尽くすことで、申し訳なさを感じさせて、相手をコントロールすること。臨床心理士高石浩一氏の説による)などがキーワードになっています。

ただ、本書での対談では、身体性やマゾヒスティックというテーマはあまりエピソードとしては出てこず、「キレる母親」に振り回される娘のエピソードが多かったように感じました。もちろん、各氏それぞれの母親や家庭は様々ですが。

これは、本書の対談相手である娘たちから見た母親の話だからかもしれません。斎藤氏の身体性をキーにする説は、母親が娘に対してなぜそんなに強い支配力を持つか、持とうとするか、という説明のための説なのだろうと思います。


また、角田光代さんとの対談の中で、娘側から考えた時の、母親との距離の取り方のヒントが出て来ました(基本的には、物理的な距離を取るしかない、というエピソードが多かったですが。その手前の、母親と別れて物理的な距離を置くための精神的な距離作りのためのテクニックとして)。それは、母親が母親になる前のエピソードを知る、というものです。

恐らく、母親という人工的な層の下に、人間としての層が眠っているんだろうと思います。