I'm not OK

小説、映画、音楽の感想など

映画 / 劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス を観てきました。
http://gekijyo.toho-movie.com/psycho-pass/

22世紀の未来が舞台のSFサスペンス。シビュラシステムという管理システムによって、人の生活や結婚相手などが管理され、犯罪を起こしそうな人は潜在犯として捕まる未来。日本に密入国してきた犯罪者を捕まえたところ、数年前に行方をくらましたあの男の姿が……。
http://youtu.be/Fn9DEPD7Rko

以下ネタバレあり、注意。







序盤

東南アジアらしい舞台、夜や雨の暗い雰囲気、怖いくらいのアクションシーンは良かったです。

前半、ヒロインの朱がたくましくも一人で日本の外に出て、紛争や格差が日常になっている世界に飛び込んで行くところはわくわくしました。飛行機に乗りながら暗い面もちで色々考える演出は、この映画が本格的な映像作品だなという感じがしました。

意外と早く狡噛と再会しますが、いきなり格闘する出会いはグッときました。また、歩行型戦闘機械との戦闘は、仕掛けが沢山あったし、朱や狡噛は生身でうろうろしているのでスリルがありました。このあとも、本気で「これは主人公たち死ぬかも」と感じさせる妥協の無いアクションシーンはすごいと思います。

中盤

その後はなんというかアンコールワットでデートというか、早く付き合って欲しいですね。でもまったく恋愛的な言動を出さない所が良いんですけど。

また、日本の外の修羅場の空間に置くことで、狡噛の思想がより浮かび上がって来た感じがしました。彼の生き様については劇中では色々な人が異様に感じて惹かれ、言葉にしようとするのですが誰もうまく言う事が出来ません。ただ、管理された世界に対して違和感や反感を感じる人間が狡噛に引き寄せられていきます。強いて言えばこの映画のコピーである「システムに抗え」なんでしょうが、テレビシリーズやこの映画の中の狡噛を観ていると、そんな簡単な言葉ではない独特な物を、彼の生き様は表しているように私は感じました。

これはなかなかすごいことで、説明のセリフでお説教せずに登場人物の生き様で思想を描くというのは並大抵のことではありません。思うに、狡噛に思想を説明するセリフを言わせず、「俺は適当にその時感じた通りに生きているだけだ」の様な態度を通させ、どうしようもなく選んでしまう物や許せない物への行動のみを描くことによって彼の思想を映像で表せているんじゃないかと思います。

終盤

と、ここまでの狡噛を描く所までは良い感じで、朱もヒロイン力全開ですばらしかったんですが、クライマックスは説明セリフが入ったり、これは勝てるでしょという安心感が出て、やや間延びしてしまった気がしました。

なんというか、クライマックスでは敵達が主人公たちを追い詰めるのが急過ぎるし、一手一手が小技だった気がします。敵の最後の一手は今までで最強の秘密兵器、のようなもう一捻りあったら、ラスト全員で協力して計略を練って戦う、という熱い展開になったかなあ。ラストがだんだんスケールダウンしていく感じがしてちょっと残念でした。勝手なこと書いてすみませんが。テレビシリーズ(1期)のラストが完璧過ぎた……。

設定

第三世界やポストコロニアリズムなどの要素も出てきますが、無秩序になった世界やシビュラシステムとはどうからむのかよく分かりませんでした。

シビュラシステムが軍産複合体のようなもので、自己拡張のために紛争や独裁体制を求めていることが、冷戦時代の遺物としてテロ組織や民族紛争、宗教対立を引き起こしている現代に似ている、ということなのかな?

狡噛と思想対決になっているのかよく分かりませんが、作品内では狡噛の体現する思想と拮抗しているとは言えなかったように思います。

いろいろすっきりしないラストでしたが、それが狙いなのかもなあ。シビュラシステムを人は選んでしまうし、日本の外の事件を解決するのにも結局それを利用せざるを得ない。でもいつか狡噛の思想を継ぐかのように、銃を手に取る若者がいるかもしれない……という場面は良かったです。早く続編を観たいです。

小道具

冒頭の、朱が狡噛とまだ再会する前にプルーストの小説『失われた時を求めて』が出てきますが、その第7部の副題「見出された時」が画面に映った時は、やられた、と思いました。使い方がうますぎる!

Remove all ads