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小説、映画、音楽の感想など

映画 アトミック・ブロンド

10月
1989年、壁崩壊前夜のベルリンを舞台にしたスパイ・アクション。

クールでスタイリッシュな作品かと思ったら、それは実際そうなのだけど、それ以上に泥臭い、タフで痛々しいアクションの連発で、どうやって撮ったんだろう??とすら思った。特にクライマックスの壁突破作戦でのアパート突撃シーン。あんな強烈で長いアクションシーン、本当に長回しで撮ったのだろうか。

音楽も映像もかっこいい。80年代のキラキラしたネオンの感じ、ダンサブルな電子音楽にボーカルが乗った過渡期の感じ。

たたの痛快アクションかと思いきや、各国の曲者スパイたちの思惑が錯綜して、何を目的にして進行しているのか難しかった。

2015年の「キングスマン」「コードネーム UNCLE」など、若干レトロ・テイストで、お国柄をカリカチュアした半分パロディのような、おしゃれで激しいアクションの映画は好きだ。もう過ぎた時代だからかはちゃめちゃやっている。

日本での時代劇の様なものだろうか。明確な敵味方と組織があり、その緊迫した中で組織の中でがんじがらめになった人間、逸脱する人間、組織を超えた連携、異文化ギャップコメディ、現代の人間には分かる政治風刺を描ける。また、舞台設定の多くを説明しなくても済む。

ただ、良くも悪くも特徴なのが、お国柄でキャラクターを造形する事だ。観ているときは特徴的でおもしろいのだが、観終わった時に人間としての個性が残らず、忘れてしまう。残るのはスタイリッシュな音楽と映像だったという記憶だけ。

ではこの「アトミック・ブロンド」ではどうだろう? 主人公の女スパイは謎めいていて、最後の最後に正体が分かるまで掴めない。同時に痛々しいくらい体を張ったアクションをするので、生々しい迫力がある。性格としては人を寄せ付けないため感情移入できないが、しかしアクション・シーンは本当に大変そうで、一緒にハラハラしてしまう。大げさにいうと、気持ちは分からないが身体的には同調する、という感じ。

謎めいた性格、正体にするというのはこの作品のコアな部分なのでそれでいいのかもしれない。

私としては、最後まで観た後でもう一度観たら、もう少し彼女の事が分かるのかもしれない、という気にかられ、また観たくなっている。

或いは、この作品の主人公は混沌とした冷戦末期のベルリンであり、それに魅入られて嘘の世界でしか生きられない人間たちだ。その中では、嘘をつく嘘をつく嘘をつく、というよりメタレベルにいる人間が上手という事になるのだろう。

あと、敵地に1人乗り込んで助けがないスリル、という感覚は良かった。ただ、時々サポートする人もいる様でその辺は中途半端だった気がする。